不意に目が覚めて、ゆっくりと体を起こした。隣で眠る彼をぼんやり眺め、ゆっくりと上下する胸をみて、夢から醒めたことをおぼろげに理解した。カーテンの隙間からちらりと見えた景色は、深い深い闇だったからきっとまだ夜中なのだろう。 「におくん、」 「・・・・・、・・・」 ぽつりと音になるかならないかわからないぐらい小さな声で、彼を呼んだ。もちろん返事はなくて、代わりに規則正しい寝息が返ってきた。それを聞いて、ゆっくりと瞬きをひとつしてから、ごろりとベッドに戻った。相変わらず規則正しい寝息を立てる彼の柔らかな銀髪に鼻を埋めれば、シャンプーの甘い匂いが優しく香った。 (…もう、寝よう。) 眠る君にそっと寄り添って、ぎゅっと目を閉じた。心地よい君の温度が、規則正しい寝息が、甘いシャンプーの匂いが、優しくて暖かくてすこし泣きたくなった。このまま、この時間が続けばいいのにと心の中で呟きながら、ゆっくりと意識を手放した。 ![]() |