仁王君は、残酷だ。 優しい笑顔で、優しい声で、優しい手つきで、わたしを愛でる。 でも、仁王君はわたしを愛しはしない。 ただただ、残酷に愛でるだけなのだ。 「におう、くん、」 「なんじゃ?」 「なん、でも、ない、よ」 「ん」 「・・・・。」 仁王君は、残酷だ。 酷く甘く、酷く柔らかく、酷く優しく、わたしに触れる。 でも、仁王君はわたしを救ってはくれない。 ただただ、残酷に甘やかすだけなのだ。 もう、やめよう。 もう、やめよう。 なんども、なんども、考えた。 もう、離れなきゃ。 もう、切り捨てなきゃ。 なんども、なんども、考えた。 でも、わたしは、弱くて、現実は、残酷、なのだ。 頭では、わかっている。 このままじゃ、だめなんだって、わかっている。 わかっているのに、わたしは、仁王君の手を、離せない。 仁王君という、残酷な存在を、切り捨てられない。 「におう、くん、におうくん」 「ん?」 「すき、だよ。すき、なん、だよ」 「あぁ。ありがとさん」 だめだ、だめだだめだ。 だめ、なんだ。 わたしは、もう、仁王雅治からは、抜け出すことなどできない。 ![]() |