何をしようかと悩んでいると、外からぎゃいぎゃいとハチや生物委員会たちの声が聞こえてきた。 それを聞いて、たまにはハチの手伝いもいいかな、と苦笑しながらハチの元に向かった。


「ハチー」
「おっ、!どした?」
「暇だから、ハチのお手伝いでもしようかなと思って」
「・・・・ありがとうな!」
「い、いえいえ」
は、一年生達と一緒に飼育小屋にいるやつらの世話してくれるか?」
「わかった!」


私が笑いながら手伝うといえば、ハチは一瞬きょとんとした顔をしたけど、 すぐにニカッと太陽みたいに笑って私の頭を豪快に撫でた。 そして、ハチは虫取り網をしっかりと握り締めて孫兵と一緒に走り出した。 私もすぐに、ハチに言われたとおりに飼育小屋のほうに向かった。





飼育小屋での仕事は予想以上に大変だったけど、一年生達と一緒にやってしまえば意外とすぐに終わってしまった。 やることがなくなってしまった私と一年生は、逃げた虫達を捕まえに行ったハチ達の加勢に行こう! と言ってそれぞれ虫取り網を持ってそれぞれ違う場所に散らばった。 私も学園内をうろうろとしながら、一年生達に教えてもらった毒虫を探す。 しばらくきょろきょろと毒虫を探していたら、後ろからハチの声が私を呼んだ。


ー!毒虫全部捕まえたぞー!」
「え、ほんと?」
「ああ。わざわざありがとな」
「でも、私、毒虫一匹も捕まえてない」
「飼育小屋の手伝いしてくれただろ?一年生達も助かったって言ってたぞ」


私は毒虫を捕まえられなかったことが、ちょっと悔しかった。 ハチはそれに気付いたのか、気にすんな!と豪快に私の頭をわしゃわしゃと撫でて、私にニカッと眩しい笑顔を向けてくるから、 私もつられて笑ってしまった。 ハチは笑顔になった私に満足すると、これからちょっと散歩に行こうといって、私の手をとって歩き出した。


「ハチ、どこ行くの?」
「んー、秘密」
「秘密なの?」
「ああ。まあ、いいもん見せてやるから」
「は、はあ・・・」


そういわれて、私はただ黙ってハチについていった。どこ行くのかなーと考えていたら、 手をハチに握られていることを思い出して、恥ずかしくなってしまった。 でも私の前を歩くハチは、そんなこと全然気にしてなくて黙々と目的地に向かっていた。 そんなハチと自然に繋がれた手を交互に見ていたら、私は躓いてしまった。


「う、わっ!」
「おっと!大丈夫か?」
「ご、ごめんっ」
「いや、気にしてないよ。ほら、ちゃんと足元見ろよ?」
「う、うん」


こける!と思った瞬間、ぐいっと手をひかれて私は思いっきりハチの胸に飛び込んだ。 ハチは私に怪我が無いことを確認すると、心配そうな顔から笑顔になって、また私の前を歩き出した。 私はさっきハチに言われたとおり、ちゃんと足元を見ながら歩いた。 でも、頭の中はさっきのハチに抱きついてしまった、という事でいっぱいいっぱいだった。





、着いたぞ!」
「・・・すごい、綺麗・・・」
「だろー。ここ、俺の秘密の場所なんだ」
「へー・・・」


ハチの声で、足元から視線を上げると目の前には見たこともないような景色があった。 綺麗な小さな滝や池、色鮮やかな花や草木、私はただただその景色に感動した。 今まで生きてきて、こんな綺麗な景色を見たことない、と思うほどハチの秘密の場所は綺麗だった。 ハチは私の感動に喜ぶと、つれてきてよかった、と笑ってくれた。 私はきょろきょろと目の前の自然を見渡して、ふといい事を思いついた。そして、くいっとハチと繋がっている手を今度は私がひいた。


?どした?」
「こっち、きて」
「ん?」
「で、目瞑って?」
「なんだよ?あ、悪戯でもするのか?」
「もう、ハチの馬鹿。ちがうよ」


私は池の近くの花がたくさん咲いているところまでハチを連れて行くと、そっと繋いでた手を放して、目を閉じて、とハチに言った。 ハチは冗談を言いながら、目を瞑ってその場に座った。私もハチの前に座ってそっと足元の花や草を少しだけ摘んで、 ちょっとしたものを作り出した。ハチは目を瞑っているのが暇なようで、ちょこちょことちょっかいを出してくる。 私は私で忙しいので、それに構っていられなくて、はいはい、とハチのちょっかいをかわしていった。


「ハチ、もう目開けていいよ」
「なにしてたんだよ?」
「これ、作ってたんだよ」
「これ、を?」


私は目をそっと開いたハチに、にこりと笑ってさっきまで繋いでいた手をとった。 そして、私がさっきまでいそいそと作っていた花の指輪をハチの指にはめてあげれば、ハチはびっくりしたように固まって、 自分の指にはまったそれをじっと見ていた。私は何も言わないハチに不安になってきて、しょうもなくてごめんね。と謝れば、 ハチはバッと私の顔を見て顔を赤くしながらふにゃりと笑って、しょうもなくなんてないよ。と言ってくれた。


「ほんと、嬉しい」
「いや、でも、それ草と花で作っただけだよ?」
「でも、嬉しい。が、くれたから」
「は、ハチ?」
「ありがとう、


ハチがあんまりにも真剣にお礼を言うもんだから、私もハチと同じ赤い顔になってしまった。 そのあと、ハチがもう一個花の指輪が欲しいと言ったので、もう一個つくってあげた。するとハチはそれを私の指にはめて、 これでおそろいだな、って無邪気に笑うから、次は私がふにゃりと笑う番になってしまった。








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