勉強するわけじゃないけど、図書室に行ってみよう。そう思って、私は図書室に向かった。 そっと戸を開くと、そこには受付で本を読んでる雷蔵が居た。


「らいぞう」
「・・。どうしたの?」


図書室は私語厳禁だけど、私は極力小さな声で雷蔵を呼んだ。 雷蔵はそれに気がついて、ゆっくりと顔をほんから離してこちらを見た。 そして、雷蔵は私を見るなりにこりと笑った。


「えっと、予定無かったから来てみた」
「そっかそっか」
「あ。今日、中在家先輩いないの?」
「うん。用事があるんだって」
「へー」


図書室には私と雷蔵しか居なかった。それなのに、私たちは内緒話をするように小さな声で会話した。 ひそひそと話す私たちの声が、静かな図書室に溶けていった。



「ん?」
「こっちおいでよ」


私がぎっしりと本の並んだの本棚をぼぉーっと眺めていたら、雷蔵がちょいちょいと手招きしながら私を呼んだ。 私は一応適当に近くの本棚から本を選び取って、雷蔵の元に行った。 すると雷蔵は隣に座布団を敷いてくれて、そこをぽんぽんと軽く叩く。たぶん、座ってって、ことかな?


「・・・・ちか、くない?」
「え?そうかな?」
「そ、そうだよ」
「・・・、照れてる?」


雷蔵の用意してくれた座布団に座ると、雷蔵と肩があたるくらい近かった。 普段なら何とも思わないその距離に、今は何でか緊張してしまう。 それがばれないように誤魔化そうとしたら、雷蔵はちょっと意地悪そうな顔で私の顔を覗き込んできた。 ぐっと雷蔵の顔が近くなる。


「ちょ、ちょ!雷蔵!」
「しー。、静かに」
「・・・は、はい。」
「ふふ、今日のはいつもとちょっと違うね」
「うー、今日の雷蔵、すごく意地悪・・・」


私は隣でくすくすと笑う雷蔵をじとっと睨んだけど、それさえも笑われてしまった。 なんだか今日の雷蔵はちょっと三郎みたいだな・・・と思いながら、私は座布団ごと雷蔵の背後に移動した。 そして背中合わせの形になる。


「あれ、拗ねちゃった?」
「拗ねてない。意地悪防衛策だよ」
「ふふ、それはまた」
「私は本読むんだから、雷蔵は邪魔しないでね」
「はいはい」


意地悪そうに笑う雷蔵を背中で感じながら、私は本を開いた。 でも内容は全然面白くもない戦術なんとかかんとかで、数ページで早々飽きてしまった。 雷蔵は雷蔵でさっき読んでいた本の続きを読んでいるのか、うんともすんとも言わない。 さっきまでは意地悪されるのが嫌だったのに、今では寂しいと思ってしまう。 それでもきっと今雷蔵に話しかければまた意地悪なことを言われる。と思い、私はもう一度面白くない本に視線を落とした。





が本を読む!と言い出して数分、背中からすうすうとの寝息が聞こえてきた。 僕はそれに苦笑しながら、を起こさないようにゆっくりと振り向いて頭を撫でてあげた。 は、それはそれは気持ち良さそうに寝ていた。そんな無防備な寝顔を見ていたらまた悪戯をしたくなって、そっとの頭を自分の膝の上に乗せた。起きたときどんな反応するのかな?なんてわくわくしている子供っぽい自分にちょっと呆れながら、 僕はさっきまで読んでいた本の続きを読み始めた。





「ん・・・」
「起きた?」
「・・・・ら、い、ぞう・・?」
「寝ぼけてるの?」
「んー・・・・」


薄っすらと目蓋を開くと、上から雷蔵の声が降ってきた。 私はまだ眠たくて、うーとかんーとか唸りながらぎゅっと近くにあった藍色に抱きついて顔を埋めた。


「寝起きのは積極的だね」
「んー・・・ん?んん?」
「おはよう、


上から降ってくる雷蔵の声を適当に聞き流してたら、だんだんと眠気は飛んでいった。 そして覚醒していく頭で、今の自分の状況をどんどん理解していく。


「うわあああ、ら、雷蔵!!」
「しー。図書室は静かに」
「あ、ご、ごめん。いやいやいや、でもこれは・・・!」
、顔真っ赤だよ?」


私はハッとして顔を上に向ければ、そこにはすごく楽しそうに笑う雷蔵と目が合って、どんどん恥ずかしくなってきた。 それで急いで身体を起こせば、の寝顔すごく可愛かったよ。なんて笑顔でまた雷蔵が意地悪言ってきて、 私はさらに恥ずかしくなった。


「もー!雷蔵の意地悪!」
「えー、だってー」
「だって、じゃない!」
「ふふ、ごめんね?」
「・・・・っ、雷蔵のばか!!」


私は顔が熱くて仕方なくて、自分の心臓が煩くて、ほんとどうしようもなく恥ずかしくて、 それを全部ぜんぶ隠すように思いっきり雷蔵に抱きついてすりすりと肩に顔を埋めてやった。 雷蔵はそんな幼子のような私の背中を軽くとんとんと叩きながら、 ごめんね。でもが可愛いから、ついね。と耳元でそっとそっと囁いた。








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