とりあえず、名前を付けてみた。


「おい、・・・おい」
「うー?」
「先生、おいって呼ぶのやめてあげてください。可哀想です。」
「・・・・美奈。なら美奈が名前を」
「先生が拾ってきた子です」
「・・・・・・はぁ」


つい先日、俺は子供を拾った。捨て猫や捨て犬を拾ったら、拾った人が面倒を見るという一般論に則って、仕方なく俺が面倒を見ている。実に、めんどくさい。最初は美奈に面倒を見てもらおうとしたが、眩しいぐらいの笑顔で「先生が拾ってきたんでしょ?」とすっぱり断わられた。でも、今みたいにちょこちょこと小言は言ってくる。


「名前、か・・・」
「この子女の子ですから、可愛い名前にしてあげてくださいね先生」
「うー、」


はぁ、とまた溜息を吐き出して、こいつの名前を考えた。タマ・・・絶対ダメだな。もうあれだ、羽生蛇だけにはにゅうとか。それか、うーうー言うから、うー、とか。


「はにゅうとか」
「却下」
「なら、うー」
「却下。先生センス無さ過ぎですね」
「・・・・・・・・」


最近気付いたが、美奈は黒い一面がある気がしてならない。いや、女は皆こんなものなのか?・・・まあ、それは置いといて、今はこいつの名前を決めるのが最優先だ。


「みなー、みなー」
「あら、ちょっと先生、今の聞きました?」
「ああ、聞いた聞いた」
「もー宮田先生は冷たい人ですねー」
「うー、うー」


こいつは美奈のナース服をきゅっと握り締めて、俺を真ん丸の目でじっと見てくる。その視線をすっと避けながら、ふと思いついた。


「・・・・
「え?」
「その子供の名前は、だ」
「まあ、可愛い名前ですね。先生が考えたにしては」
「うー!あー!」


今さらりと美奈が言ったことは、スルーするとしてチラリとなつのほうをみると、嬉しそうにきゃっきゃと喜んでいた。その姿に、若干ほっとした自分がいるのは気のせいということにしておく。





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