子供を拾った。


ちょっと神代家に用事があって、外に出たら子供を見つけた。いや、普通に子供は何人か見かけたが、そいつは、そいつだけは地面に寝てた。 そのまま放置しておくのも、ちょっとあれだったから、怪我や熱の有無を確認しつつ声をかけた。


「おい、・・・おい」
「・・・・んー」
「おい、起きろ。こんなところで寝てたら風邪ひくぞ」
「んー・・・」


軽く見た限り、怪我なし、熱なし。起きる気なし。 俺が声をかけてもこいつはまったく起きる気がない。軽く揺すってみても反応は変らない。そのまま放置したい衝動を何とか抑え、とりあえず医院につれて帰ることにした。


「んー・・・」
「・・・やっと起きたか?寝坊っ子」


医院につれて帰って早1時間。やっとこいつは目を覚ました。俺が声をかけると、こいつは真ん丸の目を開いて、きょろきょろとしている。まるで小動物のようだ。


「おい、大丈夫か?」
「・・・うー?」
「ここは宮田医院だ」
「うー?・・・みゃ、た?」


ぱちぱちぱちと大きな目で瞬きをしながら、こいつは不思議そうな顔をしている。こっちもつられてぱちぱちと瞬きをしてしまった。しばしの沈黙。なんとなく、すごく嫌な予感がして来た。


「・・・おい、お前、親は?」
「うーうー?」
「お父さんと、お母さんのことだ」
「とーさん、と、かーさん?」
「・・・・・なまえは?」
「うー?」


頬が引きつる。こいつを拾ったことをかなり後悔した。めんどくさい、そればっかりが頭を支配した。はあ、と重たすぎる溜息を吐き出して、まだきょろきょろしているこいつに頭を抱えた。





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