雨は憂鬱になるから、嫌い。やる気なんてこれっぽっちも起こらないし、全部ぜーんぶめんどくさくて仕方ない。


?起きてる?」
「・・・うるさい」
「起きてるならそろそろでてきなよ」
「うるさい」



折角布団っていう簡易要塞にこもってたのに、勝手にノック無しに誰かが部屋に入ってきた。まあ、声的に多分ヒロト。その声はかーなーり不機嫌なあたしにとって、鬱陶しくて仕方なかった。


「ヒロト、勝手にはいってくんな」
「ん?俺はちゃんとノックしたよ?」
「あーうるさい」



ギシリ、とスプリングが軋んで、あたしの要塞の一部がへこんだ。何から何まで勝手なヒロトが気に食わなくて、要塞をへこませているとこを容赦なく蹴ってやった。


「ちょっと、蹴らないでよ」
「うっさいな」
「もう。はうるさいしか言えないの?」
「うるさい!」



雨で機嫌が悪いあたしはヒロトの挑発に易々と乗ってやって、要塞をぽいっと捨ててヒロトに掴みかかった。ばちり、要塞を出た瞬間、ヒロトと視線が絡む。


「やっと出てきたね。おはよう、。」
「・・・・、」
「雨で不機嫌なのはわかるけど、ちゃんとご飯は食べなきゃ。ね?」



ヒロトはあたしの行動なんかちっとも気にしないで、笑いながらあたしの寝癖頭をくしゃくしゃに撫でた。その手は酷く優しくて、心臓がざわざわする。ギロリ、と思いっきり睨んでもヒロトはへらりと笑うだけだった。


「・・・・・・・・・チッ」
「え、ちょっと、?」
「くそくそくそ!ヒロトのばか!」
「えー?」



あたしは戦争喪失して、そそくさとさっき捨てた要塞内に逃げ込んだ。そこからちょこーっと顔を覗かせて、言葉の攻撃をふっかけてやった。けどヒロトは、それはそれは楽しそうに笑ってる。


「なに笑ってんだ!ばか!ばかヒロト!」
「だってが・・・・ふふ」
「ばかヒロトのくせに笑うな!」
「ごめんごめん。でも、あんまり可愛いことしてると」
「ちょ、え、ひろ、」
「食べちゃうよ?」



一瞬。ほんとに一瞬の出来事。獣みたいにギラギラした目のヒロトが笑ったと思ったら、いとも簡単にあたしの唇は塞がれた。