唐突に、ジャキジャキジャキ、君の手に握られたハサミが音を奏でた。唐突に、ぱらぱらぱらり、あたしの月日をかけて伸ばした髪が無残に散らばった。 「か、み・・・」 「俺は、短い方が好きなんよ」 「あーあ、」 「な?」 ジャキジャキジャキ、君の手が躊躇なくあたしの髪を切っていく。あたしはそれを止めるわけでもなくぼおーと見ているだけだった。こんなことはよくあるし、慣れた。ぱらぱらぱらり、真っ黒な長い髪がまた床に散らばった。 「ちゃんは、おれのもの」 「うん」 「すきじゃよ。、すきすきすき。愛しとうよ」 「うん。何回も聞いた」 「すき。俺は、が、すき」 君はビー玉みたいなきらきらした目玉であたしを捉えて、うっとりとした表情ですきと連呼した。そしてその手にはハサミ。なんてシュールな絵なんだろう、っておもった。長かった髪を切られて軽くなったはずの頭が、なんとなく重くていたい。 「すき、すきすきすきすき、すきすきすきすきすき」 「はいはい」 「は、おれのもの。な?」 「・・・じゃあ、仁王は、あたしのもの?」 「もちろん」 あたしの一言で君がすごく嬉しそうに、にこにこ笑い出した。あたしはそんな君の手から銀色に光るハサミを奪って、チョキンっと君の銀の尻尾を切り落とした。 ![]() |