たまたま、見ちゃいけないものを見た。大好きな大好きな先輩と、大好きな大好きな友達の、それはそれは幸せそうな笑顔。それを本当に、本当にたまたま、私は見てしまった。


「え、」


目を見開いて、ぼんやりする頭で状況を整理しながら、体のそこから湧き上がる汚い感情と誰に見せるわけでもない偽善の感情が戦争し始めて、私の体はギシギシ悲鳴を上げながらその場に硬直していた。


「見んでいい」
「・・・・っ、」



そう言って後ろから誰かさんの手が私の視界を塞いだ。まっくらやみのなかで、ぼんやりとさっき見た映像が浮かんできて、ぐっと、唇を噛んだ。


「今は、何も見いひんでいい」
「・・・う、ん」



誰かさんの手はいつもどおりの、少し平温の低い体温だった。いつもそれは冷たいだけだけど、今は逆にそれが気持ちよくて、熱くなる目頭を冷やしてくれた。


「雨が、降りよるわ」
「・・・・あ、め」



じゅわりじゅわり、ゆっくりと目の前のくらやみが滲んで、目の縁に水たまりができた。私はそれをそっと、この世界に落とした。


「あ、りが・・とう。」


掠れた私の言葉は、それはそれは静かに空気に溶けた。