夕方。外もそろそろ闇色に覆われる頃、あたしのパソコンを勝手に独り占めしていた光が、いきなり立ち上がった。トイレかなーとか思いながらあたしは大して面白くないテレビをボーっと見ていた。 「なあ、腹減った」 「ふーん。そうだね」 「せやから、飯」 「・・・・はあ?」 こいつ、何を偉そうに!と思って、あたしの横に立っている光を見上げれば、さぞかし不服そうに見下していた。それにイラッとしながら、自分で作ればいいじゃん。といえば、はよ作って。との切り替えし。ああ、こいつはこんなやつだったな。と内心呆れながら、重たい溜息をついて、あたしは立ち上がった。 「なんでもいい?」 「おん」 「なら、ちょっとまってて」 あたしと入れ替わりで光があたしのいた場所に座って、適当にチャンネルを廻していく。 ほんっと、図々しいやつだ。と思いながら、あたしは手軽にできるパスタを作る準備を始めた。 たらこと、ミートソースと、カルボナーラ。これまためんどくさいことに、3つある。けど、あいつは赤が好きだからミートソースにきーまり。はーい文句は受け付けませーん。なんて、適当に決めた。 「ひかるー、出来たから取りに来てー」 「めんどい」 「こら、それぐらいしろ」 「・・・チッ」 うええええ、なんぞこいつ。舌打ちとか。パスタ茹でたお湯をぶっかけてやろうかと思ったけど、その後がいろんな意味で大変なので、思いとどまった。くそ、いつか見とけよ!なんて、声に出さずに内心で叫ぶ。そんなこんなで、あたしと光は向かい合って、食卓に着席。そして右手にフォークを持って、いただきます。 「・・・・・ねえ、なんで食べないの」 「・・・・・・・・・・・」 食事開始から数分。あたしは出来たてのおいしいパスタをモグモグ食べていたのだけど、光は一向に食べようとしない。くるくるくるくるとフォークをお皿の中でミートソースの絡んだパスタと戯れさせているだけだった。食べ物で遊ぶな、と言いたいけど、その光の姿は遊んでいるようには全く見えなかった。 「ひかる・・・?」 「・・・食われへん」 「は?」 「・・・フォークでパスタ食われへんねん」 ・・・・・・・はい?フォークで、パスタが、食べられない?え、ガチで?あたしはそう言ってきた光を凝視した。マジありえねえ。見たいな目で。今までの行いのお返しをするが如く。すると光は少し顔を赤くして、バカにすんな!って言って、必死にくるくるくるくるフォークをまわしてた。その光景はいつもの光から想像なんて出来なくて、爆笑。それでも負けじとくるくるくるくるする光を、かわいいな、なんて笑いながらこっそり思った。 ![]() |