待っといて、て仁王に言われたから、図書室で本を読むわけでもなくごろごろ待ってたら、図書室を閉めるからといわれて追い出された。 あそこは暖房もあって、静かでよかったのになーとぐちぐち思いながら、行くあてもないのでそのまま図書室のドアの前で三角座りして、小さくなった。 ひんやりと廊下独特の冷たさが、スカート越しでも伝わってくる。 それに負けないように、さらにぎゅっと身を小さくして、自分の首に巻きつけたマフラーに顔を埋めて、ついでに目もつぶった。カタカタカタ、と外を吹き抜けているであろう冷たい北風が窓を鳴らす。いつもと違う、しんとした廊下はもう薄暗くて、誰も居なくて、不思議な感じがした。 「、、」 「っ、んー・・・?」 「、起きんしゃい」 「・・・あれ?仁王?」 待っといて、て言った仁王が、何でか私の目の前に居て、すごく複雑そうな顔をしている。 あれ、部活終わったの?なんでここに居るの?私寝てたの?ぼーっとする頭で考えてみたけど、仁王がなんで複雑そうな顔をしてるのかと、今の時間だけはわからなかった。 「寝ててごめん、なさい」 「・・・・・」 「・・・怒って、る?」 「・・・・・、」 とりあえず謝ってみたけど、仁王からの反応は無し。心なしか、顔が怒っているように感じた、から単刀直入に聞いてみた。眉間に皺が数本入ってる。こんな顔を見るのは久しぶりだなーと思った。ちなみにもう外は薄暗いどころじゃない。 「なんで、」 「・・・」 「なんで携帯、でんの?何回も、かけたのに」 「あ、・・・サイレントにして、ました」 「何回もなんかいも電話して、メールしたのに」 「ごめん、なさい」 仁王がじっと、こっちを見てくる。その表情は次第に怒っている、から泣きそうになっていく。うおっ、これは、まずいぞ。と思ったけど、今はどうすることも出来なくて、まず、仁王と図書室の壁に挟まれて動けない。近い。とりあえず、仁王が近い。 「心配した。が誰かに襲われたかと思った」 「え、それはない」 「事故にあったかと思った。怒ったかと思った。」 「どっちもないない」 「・・・俺のこと、嫌いになったかと思った」 「それは、一番ない」 がばっ、ぎゅううううといきなり骨が軋みそうなほど強く抱きしめられて、私はさらに動けなくなった。 ごめんごめん、といいながら、小さな子供をあやす様に肩に乗ってる頭を撫でれば、ぐずぐずと聞こえた。どうやら、泣かせてしまったようだ。ここで寝てしまった私と、携帯のサイレントを解除しなかった私と、心配させた私を恨みたかったけど、もう全部過去のことでどうしようもなかった。 ![]() 「ごめんね。ありがとう。だいすきだよ、まさはる」 だから、精一杯のごめんねとありがとうと、だいすきを、泣き虫な君に。 |