吹雪士郎の中にいたアツヤは消えてしまった。そう士郎は、私に泣きながら告げてきた。ぽろり、ぽろりとまるで地上に降る流れ星みたいに、涙はこぼれ落ちていく。


、あつやは・・・あつやには、」
「うん」
「もう、会えないんだ」
「うん」
「でも、それは、悲しいこと、じゃ、なくて」
「うん」



私は士郎の言葉に、ただぼんやりと相槌を打つしかできなかった。士郎の中にアツヤがいることは、いつからか知ってた。それと同時にアツヤがいることで士郎が安心したり不安になったりするのも知ってた。でも、アツヤがいなくなったなんて全然気がつかなかった。 私は士郎の言うことがいまいち理解できなくて、やっぱりただぼんやりと相槌をうつだけだった。


、ごめん。意味、分からない、よね?」
「ううん、だいじょうぶ」
「・・・ありが、とう、」
「うん」



士郎の言ったことを考えてみた。士郎が言うには、士郎の中のアツヤは消えてしまった、ということはアツヤはもういないと言うことなんだけど、アツヤはとうの昔に事故で居なくなっているわけで、でも士郎のなかでちゃんといたんだけど、それは士郎が作り出したアツヤだから本当のアツヤじゃないから、でもアツヤは士郎の中で存在していたから、から、から、だから?ぐるぐる私の頭の中でメビウスの輪みたいな考えが廻り、巡り、戻ってくる。終わりのない問題。


結局よくわからなくて、胸のあたりをぎゅーと握ってまだぽろぽろ泣ている士郎の顔を覗き込んだ。そこには、どこか清々しいような、でもやっぱり悲しそうなよくわからない、初めて見る表情をした士郎がいた。