ぐすぐす、ぐすっ、

横で寝ているはずのが、ぐずぐずいう音が夢の中に響いてきた。 その音に目が覚めて、ゆっくりと重たい目蓋を上げるとまだ空は真っ暗の暗闇だった。 となりに視線を動かすと、が上半身を起こして目元をごしごしと拭っている。


、どないしたん?」
「うぅ、う、うっ」
?」


自分もゆっくりと上半身を起こして、隣で泣いているの顔を覗き込んでみた。 ぽろぽろぽろ、大粒の涙が顎を伝ってシーツに染み込んだ。 は自分の声には応えずに、ぐすぐすと鼻を鳴らすだけ。


「ほーら、泣いとるだけじゃわからんやろ?」
「うぅ、うっ、・・く、ら」
「んー?」


よいしょ、と結構な重さのある小さい身体を持ち上げて、自分の足に乗せた。 向かいあわせの形にして、その小さな身体をふんわりと抱きしめてあげた。 自分より高い体温に、少し眠たくなる。


「く、ら、くら」
「はいはい、俺はここに居るで」
「う、ん、っ、くら」


ぽんぽんぽん、しゃっくりが出始めたの背中を軽く叩く。 は、泣いている理由を話すわけでもなく泣き続けるわけでもなく、 ただ自分の名前を呼んでくるだけだった。 それでも、別に叱ることも呆れることもせず俺は背中を叩いてあげた。


「く・・・・ら」
?」
「・・・・」
「なんや、寝てもうてるやん」


背中を叩き始めて何分経ったかわからないけど、いつの間にかは寝てしまっていた。 自分の胸ぐらいの位置から、スースーと一定のリズムを刻む寝息が聞こえる。 それを聞いていたら、自分もうとうとしてきた。


「俺もそろそろ寝よ」


を起こさないように、そっと寝かして自分もその隣に横になって目を閉じた。 ゆらゆらと眠りに落ちていく意識の中で、そっと呟いた。