「一郎太、あけましておめでとうございます」
「あけまして、おめでとうございます」


時は、12月31日から1月1日へと移り変わった。 それを確認してから、私はちゃんとに正面に向いてお決まりの言葉を言った。 そしたら、一郎太は私とおんなじことをしてくれた。 それがなんだか可笑しくて、私はぷっと笑ってしまった。


、なんで笑うの?おれ、まちがった?」
「ううん、違うよ。ただ、かわいいなって思ったんだよ」


本当のことを言ったら、一郎太はふいっと不機嫌そうな顔をした。 一郎太にかわいいは禁句なのに、と心の中で思いながら、ごめんね、と謝った。 でも一郎太の機嫌はなかなか直らなくて、ちょっと内心で焦った。


「一郎太、」
きらい」
「ご、ごめんなさい・・・」


どうしようかどうしようか、とオロオロしていたら、ふと大切なことを思い出した。 そして、ちょっと待っててね、といそいそキッチンに向かう。決して逃げたわけじゃない! そして数分後、不機嫌なうちの姫・・・じゃなくて、王子の元に戻ってきた。


「はい、どーぞ!」
「・・・・・」


しばしの沈黙。 あの、一郎太君、少しはリアクションしてほしいんですが、と思って一郎太に視線を向ければ、一郎太はきょとんとしている。


「一郎太?」
、ごはんはもうたべたよ?」
「これは、年越しそばだよ」
「としこし、そば?」


不思議なものを見るような目で、私と年越しそばを交互に見る。 あああああ、かわいい。なんなのこの子!今にも抱きしめたい。 と心の中で凄まじい葛藤をしながら、一郎太に年越しそば、いらない?と聞けば、いる!と元気な返事が返ってきた。


「じゃあ、一緒にたべよっか!」
「うん!」
「それじゃ、いただきます!」
「いただきます!」


私が両手を合わせて、お決まりの言葉を言えば、また一郎太がマネしてきた。 それをやっぱりかわいいなと横目で見ながら、そばを一口啜った。